針供養

針供養は、日本の年中行事「事八日(ことようか)」に行われる行事です。事八日とは、旧暦の128日と28日のことです。128日は新たに物事を着手するという意味から「事始め(ことはじめ)」、28日は物事を終えるという意味から「事納め(ことおさめ)」といわれ、この2つをまとめて「事八日」といいます。また、その逆で28日を「事始め」、128日を「事納め」という場合があり、これは始める「事」が新年に歳神様(としがみさま・毎年お正月に各家にやってくる豊作や幸せをもたらす神様)を迎える「事」なのか、春になって農作業を始める「事」なのかの違いです。新年に向けて「歳神様」を迎える準備を始める場合は128日が「事始め」で、お正月が終わり後片付けもすべて終わらせるのが28日の「事納め」です。お正月が終わり、人々が日常生活に戻り、農作業を始める場合は28日が「事始め」で、一年の農作業を終わらせるのが128日の「事納め」となります。

針供養は、新暦になった現在でも旧暦の日付のまま引き継がれ、128日と28日に行われています。針供養の日程は地域によって様々で、28日と128日の両日か、どちらか一方で行われています。関東では28日、関西では128日に行われることが多いようです。直接寺社に行くことができない場合、針を郵送で受け付けてくれる寺社もありますので、事前にご確認ください。京都の虚空蔵法輪寺の針供養は、皇室の針を供養するために始められたと言われ、平安時代(794年~1192年頃)から続いているそうです。現在も、128日の針供養では、皇室からお預かりした針を供養しています。

針供養は、寺社に持っていく他にご家庭でもすることができます。準備するのは、折れたり、曲がったり、錆びたりした針と豆腐やこんにゃくなど柔らかいもの、白紙(半紙など)です。豆腐やこんにゃくを皿に載せます。そして、これまで硬い生地を何度も刺してきた針に感謝の気持ちを込めながら、豆腐やこんにゃくに刺して供養します。ご家庭に神棚やお仏壇がある場合、針を刺した豆腐やこんにゃくをおいて感謝の気持ちを捧げましょう。供養が終わったら、豆腐やこんにゃくに針を刺したまま土に埋めます。針は時間をかけて錆び、いつしか土に還ります(土に埋める場合は自宅の庭で、人が通らない場所、家庭菜園などに使わない場所を選びます)。土に埋められない場合は、豆腐やこんにゃくに針を深く刺して、白紙に包んで処分します(針の処分は自治体によって異なりますのでお住まいの地域ではどう処分すれば良いのか確認ください)。

裁縫道具を取り扱っているお店によっては、針供養の時期に関係なく一年中、針の回収箱を設置しているところがあります。回収した針は、針供養を行っている寺社に送られ、供養していただけるそうです。昔は、女性にとって大切な家庭での仕事のひとつだった針仕事ですが、現在は、家庭で針仕事をすることは少なくなりました。そのため、針供養のことを知らない人も多いのかもしれません。しかし、服飾に携わる方や、和装や洋装を学ぶ方の間では、日々の感謝と上達への願いを込めて受け継がれているそうです。針供養のように、普段使っているものに感謝する気持ちは、他のものへも向けられると良いですね。