新巻鮭

北海道や東北で多く生産される「新巻鮭」とは、生鮭の内臓を取り除き水洗いし、塩漬けにして冷凍保存した鮭です。塩漬けにすることで鮭の余分な水分が抜け、旨味が増します。好みによって塩抜きをして食べる人もいますし、塩抜きせずそのまま食べる人もいます。鮭がよく獲れる地域の人にとっては、「お歳暮といえば新巻鮭」というほど定番のものらしいです。しかし、新巻鮭もさんまなどと同様、ここのところ、不漁が続いているようです。

新巻鮭に用いられるのは「シロザケ」が多く、日本で獲れる鮭のほとんどはこのシロザケです。他に「マス」「マスノスケ」「ベニザケ」なども用いられます。新巻鮭は、平安時代(794年~1182年)より前から作られていたと考えられますが、庶民が食べるようになったのは江戸時代(1603年~1868年)になってからです。日本全国に流通するようになったのは、鉄道などの輸送手段が発達した明治時代(1868年~1912年)になってからとされ、それまでは鮭が獲れる地域で多く食されていました。

新巻の由来は、塩漬けした鮭を荒縄で巻いたから「荒巻(あらまき)」と呼ばれるようになった、鮭に塩を粗く蒔いたので「粗蒔き(あらまき)」と呼ばれるようになった、鮭を藁で巻いて「藁巻(わらまき)」と呼んでいたのが「あらまき」に転じた、塩漬けした鮭を新しい藁で巻いたから「新巻」と呼ばれるようになった、新鮮な鮭を塩漬けし藁などで巻いて運んだことから「新巻」と呼ばれるようになった、など諸説あります。お歳暮の風習が一般化した江戸時代後期頃から、「新巻」という字が使われるようになり、明治時代になると「新物の鮭」や「新しく収穫された鮭」という解釈をされるようになったようです。

鮭は昔から「災いをさける(避ける)」と考えられ、鮭の卵であるイクラは子孫繁栄を象徴するものとされてきました。そのため、鮭が多く獲れる関東より北の地域では、正月の縁起物であり保存食として欠かせないものになっています。鮭が獲れない西日本では、鮭ではなく鰤(ぶり)を塩漬けにした「塩鰤」がお正月の食卓に並ぶそうです。その土地で獲れる魚を、昔の人々は保存食にし、鮭は「災いをさける」、鰤は出世魚などでどちらも縁起の良い魚として、お正月に食べていたのでしょうか。