木枯らし

冬の訪れを告げる「木枯らし1号」は10月半ばから11月末までの間に初めて吹く風速8メートル以上の北風のことを言います。昨年、東京では二年連続で吹かなかったことが話題になりましたが、西高東低の冬型の気圧配置が強まらず、上空の偏西風が平年より北を通って寒気が南下しにくかったことが影響したようです。しかし、今年は東京で114日、近畿地方で1023日に木枯らし1号が吹きました。東京での木枯らし1号は3年ぶりですね。

木枯らし1号が吹いたという発表は、気象庁がするのですが、実は日本で2箇所だけです。発表期間は東京地方が東京管区気象台、近畿地方が大阪管区気象台です。この2箇所で発表される理由は、木枯らしの定義にあう風が吹き、人口が多く人々の話題に上ることが多いからだそうです。東京地方では10月半ばから11月末までの間に吹く最大風速が8メートル以上の西北西から北向きの風ですが、近畿地方では霜降(10月23日頃)から冬至(12月22日頃)までの間に吹く最大風速が8メートル以上の西北西から東北東向きの風を指しており、期間が違うところが面白いですね。

木枯らしは日本独特の表現で、文化とそこで育まれた言葉と密接に関係しています。夏目漱石が木枯らしを「凩」と書いて句を詠んでいます。この凩は国字あるいは和製漢字とも呼ばれ、実は日本発祥の漢字なのです。日本で生み出された字なので、日本の風土や文化の影響を受けた字がたくさんあります。したがって、国字をたどっていくと日本をより知ることができるのです。さらに、漢字の作りが実にわかりやすく、簡単に読み取れるのも特徴になります。例えば、木を吹き枯らす風で凩、風を受ける巾(布切れ)で凧(たこ)、風が止むので凪(なぎ)とそのままです。

木枯らしは女房詞では「すりこぎ」のことを指します。また、女房詞とは、室町時代に宮中に仕えた女房が使い始めた隠語が一般化したものです。これは、葉っぱのない木がすりこぎで、葉を落とすのは木枯らしという連想から来ているとされます。そして、まさに葉っぱを落とし、木を吹き枯らすほどの風から木枯らしと呼ばれるようになったのです。なお、ここで言う「枯らす」は、花や葉が変色したり落ちたりするという意味合いです。そこで気嵐(きあらし)が訛って、木枯らしになったという説もあります。木が枯れたようになるという方が冬の訪れを感じられて良いですね。季節の表現を見つけたらどんなふうに季節が感じられてきたかを考えてみると面白いです。そうすれば日本の文化をより深く味わうことができます。