神嘗祭

神嘗祭は、毎年1017日に伊勢神宮で執り行われる五穀豊穣の感謝祭にあたります。その年の最初に収穫した稲穂「初穂」を天照大御神にお供えし、感謝するお祭りです。年間1500回に及ぶ神宮の恒例のお祭りの中でも、最も重要なお祭りが神嘗祭です。また、市内では神嘗祭にあわせて祝祭が行なわれ、市全体で収穫を喜び合います。日本各地のお祭りが集結するため、見物客の数も他の比ではないほどです。今年も神の恵みに感謝して食事をいただくとともに、新米をいただくときには、古来より続く伝統行事にも思いを馳せて、感謝の気持ちを忘れないようにしたいものですね。

神嘗祭は721年から始まったとされ、明治時代までの太陰太陽暦では、917日に行なわれていました。太陽暦に替わった1879年以降からは、1ヶ月遅れの10月に変更となり、現在まで続いています。伊勢神宮には皇室の祖神とされる天照大御神をお祀りする内宮と、衣食住を始め、産業の守り神とされる豊受大御神をお祀りする外宮を始めとした125もの宮社があり、それら全てをふくめて神宮といいます。

神宮のお祭りは、外宮先祭といって、まず外宮で祭儀が行なわれる習わしがあります。神嘗祭も、内宮に先んじて、外宮で15日から16日にかけて、新米を始めとするお食事を奉納する由貴大御饌(ゆきのおおみやけ)、天皇陛下が遣わされた勅使が5色(青・黄・赤・白・黒)の絹の反物をお供えする奉幣(ほうへい)、御祭神を和めるために御神楽(みかぐら)と呼ばれる儀式がまず行なわれ、16日~17日に同様の儀式が内宮で行なわれます。そして17日に、天皇陛下が宮中から、伊勢神宮を遥拝されます。

神嘗祭の約1ヶ月後の1123日には、天皇陛下が天神地祇すべての神々に収穫を感謝される「新嘗祭」が行なわれます。新嘗祭も神嘗祭と同様、歴史ある祭祀で「その年に収穫した穀物に感謝する祭祀」なのですが、当然違いもいくつかあります。簡潔に言えば、神嘗祭は、新穀を天照大御神にお供えする儀式で、新嘗祭は、新穀を奉るとともに、天皇陛下みずからがその新米を召し上がる点が大きく異なります。さらに昨年のように天皇陛下の即位後初めて行う新嘗祭を「大嘗祭」といいます。ちなみに神嘗祭は、1874年から1947年まで祝祭日であり、今は廃止されてしまいましたが、新嘗祭は「勤労感謝の日」という祝日として現在まで続いています。勤労感謝の日は、「勤労を尊び、生産を祝い、国民が互いに感謝しあう日」という意味があります。名称が変わっても、神嘗祭の「収穫を祝い感謝する」という思いを継承したものともいえます。