白南風

「白南風(しらはえ・しろばえ)」という言葉を聞いたことがありますか。「白南風」は梅雨が終わって空が明るくなった頃、南東方面から吹いてくる夏の季節風のことです。季節風とは季節によって向きを変える風のことで、冬は大陸から海へ、夏は海から大陸へ向かって吹きます。モンスーンとも呼ばれています。日本列島は夏に、太平洋高気圧から南東季節風が吹き寄せるようになります。

これを「夏の南風」と呼び、梅雨時に湿気が多く黒い雲と暗い空に吹く南風を「黒南風(くろはえ)」、梅雨明け後や梅雨明け間近に、夏の真っ白な雲がかかる空にそよ吹く爽やかな南風を「白南風」と呼びます。「黒」と「白」という色は、雲の色を表しているのですね。また、地域によっては他の種類の南風もあるようです。鳥羽・伊豆の漁師の間では、梅雨の始まりに吹く強い南風を「黒南風」、梅雨の間に吹く強い南風を「荒南風(あらはえ)」、梅雨明け後や梅雨明け間近に吹く南風を「白南風」と呼びます。

俳句を作るときに欠かせない季語としても使われているようです。白南風は梅雨が終わって黒雲が去り、夏の真っ白な雲がかかるころにそよ吹く南からの季節風ですので、夏の季語になります。歳時記では、黒南風は仲夏(ちゅうか:夏の半ば頃のこと。6月6日~7月6日)、白南風は晩夏(ばんか:夏の終わり頃のこと。7月7日~8月7日)の季語に分類されています。梅雨の始まりに「黒」、梅雨の終わりに「白」ということで、空の雲の色を表しているそうですが、人々の気持ちを表しているような気がしますね。今年は新型コロナウィルスに始まり、この長い梅雨も暗い気持ちにさせられるので早く白南風を感じたいものです。