うま味調味料の日

グルタミン酸塩を主成分とする調味料製造法が特許化されたのが、1908年7月25日です。東京帝国大学の池田菊苗博士は、日本人が古くから料理に使っていた昆布だしのおいしさの正体が、グルタミン酸であることを発見し、その味を「旨味(うまみ)」と名付けました。そのグルタミン酸を主成分とした調味料の製造特許は「日本の10大発明」の一つになっています。1909年には最初の旨味調味料が市販され、現在では世界100カ国以上で使われています。その博士の特許取得日に因んで、7月25日が「旨味調味料の日」に制定されています。

「旨味(うまみ)」は、5つからなる基本の味の一つです。「旨味」物質は、昆布などに含まれるグルタミン酸、鰹節などに含まれるイノシン酸、干ししいたけに含まれるグアニル酸などが有名ですが、これらを組み合わせて使うと、相乗効果で「旨味」がさらにアップします。肉に多く含まれるイノシン酸とグルタミン酸を合わせると、7~8倍の旨味を感じると言われています。グルタミン酸を最も豊富に含む昆布と肉をあわせることで意図的に肉の旨味を増やすことができるのです。グルタミン酸はチーズ、醤油、味噌、白菜、トマト、アスパラ、ブロッコリー、玉ねぎにも含まれています。旨味物質は単独で使うより、アミノ酸であるグルタミン酸と、核酸系旨味物質であるイノシン酸(肉類・魚類・鰹節に多く含まれる)やグアニル酸(干ししいたけや乾燥ポルチーニに含まれる)を組み合わせることで、旨味が飛躍的に強くなることが知られており、それを「旨味の相乗効果」と呼びます。

例えば日本料理では昆布(グルタミン酸)と鰹節(イノシン酸)、西洋料理や中華料理では野菜類(グルタミン酸)と肉類(イノシン酸)を組み合わせて出汁をとり、古くから料理に利用されてきました。旨味の相乗効果が発見されたのは1960年のことですが、それよりもずっと前から世界各地で経験的に料理に活かされてきたのです。それからあまり知られていないかもしれませんが、赤ちゃんが生まれて初めて口にする「母乳」には、旨味成分であるグルタミン酸がたっぷり含まれています。赤ちゃんは苦味や酸味に顔をしかめますが、「旨味」を味わうと穏やかな表情になります。甘みや旨味を含んだ野菜スープなどでは、その心地よい味を好むことが知られています。グルタミン酸は私達の体の中でもつくられており、体の中には約2%の割合でグルタミン酸が含まれています。

私達と「旨味」の出会いは、とても自然な流れなのです。「旨味」は世界でも注目され、今では「UMAMI」は国際的な公式用語になっており、日本料理アカデミーが主催する「日本料理フェローシップ」には「世界のベストレストラン50」に名を連ねる名レストランのシェフなど、海外の一流シェフが多数参加、彼らを通じて世界に「旨味」の活用が広がっています。2013124日に「和食:日本人の伝統的な食文化」が世界無形文化遺産に登録されました。和食が評価されたポイントのひとつが、四季折々の多様で新鮮な食材が用いられていることと、「だし」や味噌などの発酵技術で素材の味わいを引き出していること、また、一汁三菜の食事スタイルや、「だし」の「旨味」を上手に使った動物性油脂の少ない食生活が、栄養バランスがよく健康的だとして、世界から注目されています。